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綾辻行人 『Another2001』

Another 2001 Another (角川書店単行本)
Anotherシリーズ第三作。
『Another』から『Another エピソードS』を経由し本書に至るまで、ホラー的な特殊設定に加え登場人物も一部共通する地続きの続編となる。ただ手に取ってみてから『エピソードS』は未読と気付く。おそらく未読でも問題ないよう、興を削がないようにはできている、と思われる。後追いでいずれ読みたい。
もとは『野生時代』での連載作品でありそれを加筆修正したもの。著者自らあとがきで語る通り、連載作品で大長編化する悪癖というか(『暗黒館の殺人』)、多数の細かいエピソードによりじれったい展開が続く。ただ文章自体は読みやすく、また主要人物についての丁寧な描写を重ねており綾辻作品独特の雰囲気作りに一役買っている部分もあるため、あながち冗長なだけとも言い切れない。
2001年を舞台にした小説を2020年に刊行、というのはそうした事情から来るもの。致し方ないとは言え、タイトルにあると大いに違和感が目立つ。
シリーズに共通する設定と、作品固有のギミックの組み合わせは面白く、流石綾辻と言ったところ。
更なる続編も構想があるとのことで、楽しみに待ちたい。