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森博嗣 『アンチ整理術 Anti-Organizing Life』

アンチ整理術 Anti-Organizing Life (講談社文庫)
既存の価値観とは逆の、常識的ではない考え方を示すことが多い森博嗣実用書シリーズ。
本人はそれを天の邪鬼と言うが、逆張りの選択に道理があるように感じられ、またそれが様々な成功に繋がっているようなのだから面白い。
今回は「整理術」「仕事術」。だがタイトルの通り森博嗣はアンチ整理派。パブリックな空間等一部を除き整理をしない。
なお、森博嗣の実用書は抽象的な価値観の語り口が多い。今回も、具体的な仕事での整理術を求められての執筆依頼だったが、整理する必要性を感じない人だから欲しい回答はまず返されない。ごく一部の例外のみが具体的に語られる他は、抽象的な考え方を複数な角度から繰り返し語られる格好である。
そんなこともあり、正直言うと繰り返しも多く尺に困っている風もある。苦肉の策か、執筆に至る前の編集者とのメール問答内容が中盤を過ぎて掲載される。だが実はここに面白みがあり、本書の前半で先に森博嗣の考え方が綴られた後に問答の順番になるため、森博嗣なら編集者の質問にこう答えそうかなと推測ながら読むのが面白い。森思考トレース。
なお、本書は整理ができない、整理をやらない人に対する励ましになっている気もする。森博嗣の天の邪鬼さは、常識的にやらなければいけないとかやったら立派というものの疑問から始まるので、一時的には読むと勇気付けられるというか、許される気分になる。ただ自分は森博嗣ではないので、それで全て解決するわけでもないなぁと感じるまでがセットでもある。