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書は言を尽くさず、

本読んだりしています

吉田修一 『平成猿蟹合戦図』

平成猿蟹合戦図 (朝日文庫)
週刊朝日」連載作品。
歌舞伎町のバーテンダーがなんやかんやで政界を目指すという物語。
著者自ら「リアリティの縛りを少し緩めた」*1と語る作品で、ストーリーラインを優先して登場人物を配置したような作品。
吉田修一作品の素晴らしさは、日常から切り出した生活臭溢れる仕草や何気ない心理描写の妙にあるが、本書ではそれらの特長があまり見られない。人を惹き付けるという若者がさほど魅力的に映らなかったり、ヤクザが全く怖くなかったり、そもそもご都合主義的な展開が多すぎたりと、これは明らかにリアリティの縛りを緩めた弊害と言える。
著者が新境地に挑戦した作品であり、これまでのファンが付いて来れるかを試すような作品。
個人的には著者のストロングポイントを失っただけのように感じられた、とだけ言い残す。