書は言を尽くさず、

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初野晴 『向こう側の遊園』

向こう側の遊園 (講談社文庫)
書き下ろし作品『アマラとカマラの丘』の改題。連作短編集。
動物の霊園があるという廃遊園地。そこを訪れる者たちと霊園を管理する青年の物語。
本書では動物と人間たちの業のようなものが描かれ、それぞれの短編の結末に見える真相はどれも重苦しい。「ハルチカシリーズ」のような若さによる希望を見せるようなこともなく、あくまで冷徹な事実が存在する。「現実の苦さ」を描くのが得意な著者の本領発揮とでも言うべきか。
著者は身を切り刻みながら綴り、読者は切り刻まれながら読むような作品。