書は言を尽くさず、

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舞城王太郎 『されど私の可愛い檸檬』

されど私の可愛い檸檬
『群像』掲載の2編に書き下ろし1編を加えた短編集。
『あなたは私の瞳の林檎』と対になるような位置付けで、これも落ち着きのある舞城。視点人物が『〜林檎』は学生、『〜檸檬』は社会人中心で、そこだけ切り出すと成熟度の違いはあるようにも思えるが、自己と他者との対峙という意味では大差ないのかもしれない。また恋人や伴侶などのパートナーとの関わりは、漏れなく重要な物語を形作るファクターとなっている。『〜檸檬』表題作での四方田さんとの付き合いなど最たるものである。
表題作は何らかの創作活動を行うものに向けているように見せて、あらゆる仕事や生き方に共通するような示唆である。ワナビーにとっては、さぞ心揺さぶられることだろう。