書は言を尽くさず、

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雀野日名子 『トンコ』

第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作含む3編収録の短編集。
ホラーは描写力、なんて基準をどこかで知って以来、自分のホラーの読み方も同様に描写・文章力に重点を置いたものとなったが、著者は描写力を備えた作家であることは間違いない。
表題作は豚の「トンコ」が繰り広げる脱走劇。終盤の思いも寄らぬ感動に噎ぶ。
ただし表題作よりも「黙契」の物語を牽引する謎や胸を突く展開の方が、遥かに強い印象を残す。日本ホラー小説大賞によくある、同時収録作のインパクトの強さをこの著者においても見られたわけだ。