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小泉迦十 『崑崙奴』

崑崙奴 (星海社FICTIONS コ 6-01)
デビュー作『火蛾』以来24年ぶりの新作。
唐代の中国、首都・長安を舞台とする連続殺人。
遥か古代の異国を舞台とした物語は一見ハードルが高そうだが、用いられる単語に当時の呼称や概念が多いのみで、語り口は現代的。用語の定義についての補足も適宜で分量も控えめなためテンポを崩さず、リーダビリティが高い。また視点人物の感性と思考能力が小市民的だが卑屈過ぎず、読者の視点に寄り添うような言わばワトソン役。物語への導入を助ける役割を務めている。
という読み物として優れたこれらの点と、古代中国の設定下ならではの連続殺人の真相と動機でミステリとしても唸る完成度。24年の歳月が付与したものかは分からないが、納得の読後感が残る作品。