書は言を尽くさず、

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アンソニー・ホロヴィッツ 『カササギ殺人事件』

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)
物語は女性編集者の独白から始まり、すぐに本書と同名の『カササギ殺人事件』という作中作ミステリに突入する。後半は女性編集者に視点が移り、『カササギ殺人事件』の著者に関する現実の事件を追う流れとなる。
まずは作中作の描写に舌を巻く。舞台となる英国の田舎町。発端はとある名家の家政婦の不審死。彼女の葬儀の前後に描かれる登場人物は、各々何らかの秘密と不穏さを匂わせながら行動する。続いて発生する殺人事件。殆ど全員が不審。丁寧な人物描写と謎が物語を牽引し、探偵が犯人が判明したと告げるここぞというところで上巻は閉幕する。
下巻からの展開は、正直予想を超えてくる。現実世界でも大きな謎が提示される。また、作中作のモデルとして作中の現実世界を用いており、そのリンクを辿らせることにより下巻へのスムーズな導入を実現している。上巻で引き込まれた読者を絶対に掴んで離さぬような巧妙さ。そしてトリックの工夫。上下巻ながら無駄な部分はなし。傑作。