書は言を尽くさず、

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矢部嵩 『未来図と蜘蛛の巣』

未来図と蜘蛛の巣

祈るって何?
自分と関係ない物事に、関係のあるふりをすること

25編の短編集。
矢部嵩の小説には狂気と理性の両方が宿る。25編は各々違う性質であるものの理外を一律含みつつ、一方で真理と核心については含む度合いにばらつきがある。毫も含まぬものもあれば真理とグロテスクとをサンドイッチしたようなものもある。
自分としては、真理と核心のあっけらかんとした語り口に魅力を感じるタイプ。そして理外に溢れていても何らかの整合性がありつつ、狂気がちらほらと除く不穏さを好む。それらを満たす表題作や「現在地のゲーム」「エンタ」「蜘蛛の国から」で、極上の矢部嵩を味わうことができた。
本書はそこかしこでやたらと近場の「未来」を意識させる、それは時が未来の方向にしか進まないから、ということだろうか。