書は言を尽くさず、

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西尾維新 『ウェルテルタウンでやすらかに』

ウェルテルタウンでやすらかに
書き下ろし作品ノンシリーズ。
犯罪小説家・言祝は自称町おこしコンサルタントの生前から、ミステリーの執筆を依頼される。その執筆においての条件は、「安楽市」を舞台とした「自殺小説」であった。
語り手の言祝がその自治体を取材に訪れることで物語は展開する。西尾維新の風呂敷広げと畳み芸が見られるいつもの作品と言える。一方で興味が湧いてしまうのが、語り手の職業が小説家であることと、相応のヒットを経た中堅作家ということ。著者との同一性・類似性という目線である。終盤で見られる語り手の発案と小説に関する可能性について、その同一性を踏まえて読むと興味深い。勿論、著者の創作した登場人物の一人にすぎないため、同一性など読み手の勝手でしかないが、少し信じてみたくなる内容ではあった。