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森見登美彦 『太陽と乙女』

太陽と乙女(新潮文庫)
森見登美彦の雑誌掲載エッセイ、自作解説、他作解説、メディアミックス作品への寄稿などを集めたエッセイ集。
洒脱でウィットに富んだ文章は読み進めるだけで楽しい。また、デビュー当時の日記を可能な限りそのまま掲載したものなどは、当時の心境や背景を探れるもので貴重。
巻末あとがきで「エッセイは書きにくい」と語っている。エッセイはノンフィクションだが「本当のことを正直に書こうとすればするほど、なんだか嘘くさい」、小説では「本気で嘘をつけばつくほど、正確に自分を表現できたと感じられる」という説明に納得する。この理由なり、台湾の雑誌向けに小説について書いたものを辿っていき見える部分なり、奔放で気儘な作品を作り上げている著者だが内面は生真面目でロジカルで一貫性がある印象を受ける。通常を理解して初めて異常と非常が描けるということか。
何故著者の作品が好きなのかという理由が少し分かった気はする。この著者の根っこのロジカルが珍しく前面に出たのが『四畳半神話大系』(と自分は思っている)。そして、これが私的不動の森見ベストでもある、ということが一つの証左かなと、なんとなく思う。