桃子は義父・義母の家の庭にある離れに夫・真守と暮らしている。ある日、義父の入院・夫の不倫などの事件が勃発する。愛人と対話し、夫から離婚を迫られるという非常事態。視点は桃子中心に描かれる。
こう聞くと単なる不倫小説に思えるが、こうした状況で、桃子は離れの床下が気にかかり始め、畳を剥がし、床板をチェーンソーで切り離し、穴を掘り始める。こうした理外を混ぜ込むあたりが吉田修一。桃子がチェーンソーを買ってウキウキする様は独特な異常の表現。これが無ければ、吉田修一得意のやけにリアリティに溢れた不倫小説、というだけだったろう。
しかし、結末は賛否両論ではないかと思う。期待と、外れただけではあるが。