佐内正史が風景写真を撮り、吉田修一が写真からインスピレーションを得て小説を紡ぐ。各界の手練たちのコラボレーション。
こうした作品はバランス感覚が重要である。小説が写真の良さを殺してはいけない。ただ本作については、吉田修一は役割を十分果たしている。
長過ぎる小説は写真の雰囲気を崩すため、ショートショートクラスの分量での表現を求められる。少ない紙幅で趣旨を守り、尚且つ個性(不快感と爽快感)を残すことができるのは、流石といったところである。
長編よりも短編向きの作家だと思っているので、元より得意分野なのかもしれない。