書は言を尽くさず、

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舞城王太郎 『私はあなたの瞳の林檎』

私はあなたの瞳の林檎
『群像』掲載の2編に書き下ろし1編を加えた短編集。
どちらかというと、落ち着いた舞城。物理的暴力や超常的展開はなく、心理的な苛めと真理的な正鵠を射るような物語ばかり。そうするとやっぱり説教臭い面が強いのは一癖。だが、どの短編も何らかの崩壊を予想させながら展開し、その危うさから読者を強く惹きつける。どの主要人物も定量的な意味では若く、しかし定性的な意味では成熟したように見える者もおり、その凹凸から生まれる齟齬が揺さぶりを生み出す。
青臭いとか青春小説とか、使い古された雑な言葉で括れない。言葉ってのはもっと慎重に作らなきゃ駄目、という作中人物の言葉が胸に蘇る。