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法月綸太郎 『ノックス・マシン』

ノックス・マシン
4編収録の中編集。
表題作は「かのノックスの十戒を理論に使ってタイムマシンを作る」というどこからどう見てもトンデモなお話。著者としてはSFの位置付けらしいが、謎の提示と解決というプロットの作りや、選んだ題材から考えるとやはりミステリだと感じる。
他にも古典海外ミステリの作者とキャラクタが頻出する「引き立て役倶楽部の陰謀」や、ぶっ飛んだ脱獄小説「バベルの牢獄」、表題作の続編「論理蒸発――ノックス・マシン2」など、一癖も二癖もある作品ばかり。しかし、一貫するのは探偵小説への愛というか、著者の深い拘りがどの作品にも見え隠れする。
好意的な意味だが、こんなに真摯で馬鹿バカしいミステリはなかなかない。久しぶりに読んだ特上のバカミスで、何とも懐古的な気分に包まれた。


なお、「このミス」1位である事以外の事前情報無しで手に取ったところ、長編でなく中編集なので若干がっかりした気持ちだった。当然著者や作品に罪はない。投票方式で中短編集と長編の別集計がないシステムだから仕方がないし、単に自分の好みだけの問題でもある。
ただ、中短編集がその年の1位を取るということは──その年を代表する作品が短編集だということはどうなのかと考えてしまう。