書は言を尽くさず、

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舞城王太郎 『畏れ入谷の彼女の柘榴』

畏れ入谷の彼女の柘榴
三編収録の短編集。
近年の舞城作品でよく見られるねちっこさというか、正しい理解を持つ者とそうでない者、思考停止する者などへの峻烈な描き方と精神の削り合いが目立つ。

表題作は超常的に妊娠させることができる少年とその父の話。妻のキャラクタ造型が、まさに舞城作品らしい壊れ方と整い方をしている。福井弁?の力も強い。

「裏山の凄い猿」は、人を好きになれるかどうか、思春期といえばそれで終わってしまうような、しかし人生において重要な要素の掘り下げ。両親との食事シーンが印象深い。話題は前述のような内容であり、それでいて食べていたものが「すき焼き」…。

「うちの玄関に座るため息」は、古くより伝来してきた家のしきたりのようなものと、3兄弟のそれへの取り組みと精神的な成長について。母との電話が生むパラダイムシフトは面白い。