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『十年交差点』

十年交差点 (新潮文庫nex)
テーマは「十年」のアンソロジー。著者は収録順に、中田永一、白河三兎、岡崎琢磨、原田ひ香、畠中恵
SF設定かつ泣かせる話の中田、トリッキーで世知辛い白河は普段通りと言える。
岡崎は初めてだが、手堅いお泣かせという印象。少しだけ、表現上の言い訳がましさを感じるが、作家性かこの主人公特有なのかは不明。
原田も初めて。「十年」というテーマに一番素直に取り組んだ作品か。映像前提なのだろうか、文章力と会話文が親切でないというか、導入に難あり。また、展開にはもう一味欲しがってしまう。
畠中は河童が主人公の怪談というか快談で、他と雰囲気が違い過ぎて切り替えるのに必死だが、これはこれでアンソロジーの自由度の高さを感じられて面白い。細かくて詰まらん突っ込みだが加藤清正が肥後にいた時期と北条氏が滅ぶ前の時期が重なるのだろうか。

通して振り返ると、心理描写の複雑さも物語の面白みも白河が群を抜いている。お目当はそこだったのだから、期待通りではある。