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書は言を尽くさず、

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吉田修一 『路』

book

路 (文春文庫)
台湾に新幹線を走らせる。2007年に実現した史実を下敷きにした群像劇。
こうした大きな流れの中で複数の登場人物を並行して描く形式は、『平成猿蟹合戦図』『太陽は動かない』などの系譜。ただ、その2作は大枠のエピソードを進めるために登場人物が配置されたように見えてしまうが、本作は台湾新幹線プロジェクトという大枠とそれに関連したりしなかったりする各登場人物のエピソードが絶妙なバランスを保っている。視点人物として最もウェイトが高い多田春香などはその好例。(台湾新幹線プロジェクトに従事するが、個人としての物語の主題はそこでない)
あとは作者の台湾への思い入れが伝わる作品。台湾各所の情景描写は丁寧で、かつ観光地のみならず田舎の描写などもあり、リアリティを感じさせる。吉田修一といえば長崎という印象だが、本作により台湾もそこに付け加わった。