書は言を尽くさず、

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初野晴 『1/2の騎士 harujion』

『水の時計』の叙情性溢れる文章と扇情的なストーリーで横溝正史ミステリ大賞を受賞した著者の、『漆黒の王子』以来の長編。
女子高生と騎士の物語と聞き、冒頭での幽霊の如き騎士との出会いの経緯を読んで、果たしてどうなることかと思ったが、正直なところ杞憂であった。
構成としては長編ではあるが、5編の短編と前後日談を含めた連作に近い。ファンタジー風の設定はあるものの、必要以上にプロットやトリックへ絡めることはせず、地に足の着いた道筋で真相究明・事件解決に至る。異色なような、正統なような、ミステリ。
独特の叙情性を含んだ文章も特長の一つ。思春期の少女視点は著者の文章と非常に相性が良いように思う。