書は言を尽くさず、

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乾くるみ 『クラリネット症候群』

徳間デュアル文庫として刊行された『マリオネット症候群』に書き下ろし表題作を加えた一作。
「マリオネット症候群」は、人格転移というSF設定を存分に用いたミステリ風味の作品。表題作は反面SF設定は軽めで、がっちりした暗号物のミステリと言えよう。
いずれもスラップスティックに近い雰囲気で読み易いが、著者の特異なセンスが展開や結末等の端々に感じられ、頁を捲る手が止まることがある。
特に、解説で大森望が述べているとおり、女性観については違和感を禁じえない。ネタとして落とし込める範囲を超えて不快感を与えている気がしなくもないわけだ。なお、この女性観の偏りについては同著者の『イニシエーション・ラブ』が特に顕著だと思う。
読者を選ぶ作家だと思えるだけに、昨今の売れっ子具合は不思議だ。