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小林泰三 『逡巡の二十秒と悔恨の二十年』

逡巡の二十秒と悔恨の二十年 (角川ホラー文庫)
2020年に亡くなった小林泰三の雑誌掲載作品・アンソロジー収録作品等をまとめた10編収録の短編集。
ホラー・SF・ミステリと多彩なジャンルで多才さを見せつける著者らしい作品集となっている。ホラー・SFに偏りがちだが、短編だと小林泰三の場合はどうしてもそういう作品が多くなる。
初読で面白かったのは「侵略の時」。家族や知人の中身が侵略者に置き換わっていくというインベーダーものとしてはありがちなネタだが小林泰三らしい味付けが面白い。
何編かはアンソロジー収録時に読んでいてパラパラめくり返す程度だったが、ラストの「サロゲート・マザー」はじっくり読み返した。世界の反転と壊れ方が素晴らしく、本書の締めに相応しいと思う。
もう新しい作品を読めないのは本当に残念なことだが、未収録短編はまだあるはずで、何とか読みたいものだ。