著者死後に編纂されたミステリ短編集。
小林泰三独特のロジカルな台詞回しとどこかに満ちる狂気、ミステリ的な世界の反転を楽しめる、傑作選の名に恥じない作品集である。
「獣の記憶」は狂気と論理の答え合わせ、「攫われて」「独裁者の掟」は鮮やかな世界の反転、「双生児」は独特の論理的な会話、「五人目の告白」もまた世界の転換そして混沌。
個人作品集への初収録は「籠城」。パンデミック状況下にシェルターに逃げ込んだ人々についてだが、ミステリとしての面白みだけでなく小林泰三のブラックさとシニカルさも味わえて面白い。