森博嗣の実用的新書では、既存の(または多数派の)概念の逆が示されることが多い。
今回は、悲観的・悲観性などマイナスイメージのある「悲観」についてのメリットや実社会における必要性、対義の「楽観」との差異と相補性などが語られる。抽象的な概念や解釈のスタンスから、森博嗣の仕事術的な一面が垣間見えてくるのは、森博嗣の実用的新書の類では頻繁に見られるもの。
印象的だった部分を2点。
・自殺する人は、平均的にみれば楽観主義者という解釈。その段階まで楽観していて手を打っていなかったから、衝動的に死を選択する。悲観が足りないから、死んだらすべて解決できる、と楽観してしまう。これは逆張りのようにも感じるが、理屈は立っていて面白い。
・集団悲観を煽るマスコミ。大災害などで悲しみを共有しよう、大勢で一斉にしようという運動を、独り善がりならぬ多数善がりと表現することの面白み。