長編小説。
物語は主に2つの視点から進む。悪魔祓いを副業とする「私」がひきこもり青年への対処を請負う「私の話」と、数百億円の損害を発生させた株の誤発注事件について、システム開発会社社員が原因調査を行う「猿の話」。現実世界を舞台にするかと思いきや、かの西遊記の孫悟空がたびたび登場し話をかき回す。そうした混沌とした雰囲気で展開していくストーリーは、唐突に1本の物語に収束される。
が、一風変わった収束というか、著者の初期作ほど気持ちよくパズルのピースがはまるような収束はしない印象。細かい伏線のリンクよりもむしろ、著者の前職でもあるシステムエンジニアや、西遊記・エクソシスト等の個別のテーマを楽しみながら書いているような気がする。
この辺りは、文庫版解説でも語られている伊坂幸太郎第二期の傾向なのだろうか。確かに直近に読んだ『あるキング』も、かなりの変化球だなぁと感じた。