イヌたちの物語。畜生ではない、確固たるイヌたちの物語。
太平洋戦争における日本軍の軍用犬たちをルーツとして、その血統は各地に散らばり、第二次世界大戦から冷戦終結まで数多くの交配を経て代替わりし、やがてイヌの家系図は複雑に絡み合う。
勿論イヌはヒトのもとに、ヒトとともに生きるため、物語にはヒトたちが登場する。しかし、本書においてはヒトはイヌの媒介であり、壮大な物語はイヌの血統により生み出されている。
いくつものイヌによっていくつものエピソードが生まれ、複数のエピソードは絡みあっている。好きなエピソードは、カブロンから連なる件。終盤の盛り上がりを支える展開に加え、著者が『アラビアの夜の種族』で見せたようなユーモア要素も含まれており、没入感は素晴らしい。
大傑作。