書は言を尽くさず、

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吉田修一 『ひなた』

ファッションというのは、誰かに見せるためのものではなくて、まず自分に見せるものだと思う。そして誰よりも自分を見ているはずの自分に、本当にいいものを身につけさせてやることは、決して無駄なことではないような気がする。

現代に生きる男女4人の生き様が、4つの視点×四季の16パートに分けて語られる。
吉田修一は、日常に潜む「ひずみ」を描く力が非常に長けている。本作では、恋愛・仕事・家庭・就職・交友・出生等、4人各々の抱えるひずみが大小の波紋を描き、他者の持つ踏み込めない「聖跡」とその波紋が触れあったり触れないまますれ違ったり、というような危うさを感じさせる。
特殊ではあるが有りそうな観点・感性に基づき描かれる独白も魅力的。