この展は絵画展ではない。まさにマンガ展である。
ただ「絵画」を飾り続けるだけではなく、そこに連続する「物語」が存在する。
加えて、平面的な世界に閉じたマンガとも一線を画し、空間を意識して構成することにより、「上野の森美術館」そのものをあたかも一個の「物語」と化している。
ネタバレ防止のため詳述はしないが、『バガボンド』の番外編として立派に成立する「物語」である。
無論一枚一枚の絵の完成度は非常に高いが、井上雄彦の画力は既に認めるところである。
デッサンへの拘り、筆とペンの使い分け等、絵師としては最早完成された域に達するように思う。
今回はむしろ、漫画家として必要なネームも含めた物語の展開力・構成力を見せようとした展示会であったように思う。