書は言を尽くさず、

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古川日出男 『13』

一言で表せば、片目のみに色覚障害を持ち生まれた男の物語。
著者の特徴といえば、勿論豊穣な文章力だが、他に物語に息を吹き込む力の強さが挙げられるように思う。
本書の構成は第一部・第二部と分かれている。第一部は舞台を日本またはザイールとし、主人公・響一の生い立ちから中学卒業・ザイールに渡り様々な原始の色彩との接近が語られる。第二部は舞台を主にアメリカとし、響一がハリウッドの映画製作に携わり、音楽や映像等様々な芸術・美術との交わりが描かれる。
第一部と第二部の雰囲気の差異は激しいものであり、第二部に感情移入できないまま結末を迎えてしまったのが実のところである。
しかし、無論第一部と第二部の双方が存在して初めて本書は成立する。物語へ生命の息吹を与える瞬間は終盤、正にラスト数ページ。圧巻の一言である。