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倉狩聡 『今日はいぬの日』

今日はいぬの日
『かにみそ』作者の受賞第1作であり初の長編。
西島大介のポップなカバーイラストとの組合せはデビュー作から継続。このイラストから期待した層は一定いるようで、良い意味でも悪い意味でも裏切られたという声は聞く。
中身はペット産業に対する警鐘を鳴らすような、重く渋い内容。カバーとのギャップもまたデビュー作と同様。しかし、アクション描写の多さという差もある。著者の固く手続き的な文体は、アクションには向かないと感じた。
また、長編としての話の転がし方には若干違和感というか、歪さがある。例えば、複数の視点を駆使しているものの、感情移入がしづらかった。視点人物らの掘り下げを事前にもっとしておけば、そうはならなかった気がする。
以上のような惜しさはあるものの、丁寧で繊細な描写には好感が持て、以後も見守りたい作家である。