書は言を尽くさず、

本読んだりしています

心に残った小説ベスト10*1

1:佐藤友哉 『水没ピアノ
鏡家サーガ第3作。今読み返すと、文章の稚拙さや直接的すぎる表現や一過性・時限性ある単語等々にうんざりするかもしれないが、あの時感じた絶望感・転落感は間違いなく自分にとってのリアルだった。鬱屈した精神をお持ちの方は本書でおさらいすべし。


2:西尾維新 『クビシメロマンチスト
戯言シリーズ第2作。『水没ピアノ』とちょうど同じぐらいの年に刊行され、自分の心を揺さぶりまくった一作。ミステリ的な要素も小説的な要素も一癖あり、自意識に縛られた年頃の読者の心を蝕む。


3:浦賀和宏 『とらわれびと』
安藤シリーズ第4作。調子よく狂気を書いていた頃の浦賀和宏。直接的な言葉選びや展開にどこか幼稚さは漂うが、それこそが味だったはず。壮絶な眩暈感溢れるラストに活目せよ。


4:森見登美彦 『四畳半神話体系』
やっと違う雰囲気の作品が出てきた。淡い恋愛話をほんわか洒脱な文体で描いた、2作目にして著者の到達点。構成面でもエピソード面でも思わずニヤリ。あと京都に行きたくなる。


5:大山尚利 『チューイングボーン』
ブンガクテキホラー①。主となるのは物語そのものの筋ではなく、思い悩む主人公の心理描写である。モダンホラーとしてはベタだが、達者でリーダビリティの高い文章が物語へ読者を引き込ませる。あとロマンスカーに乗りたくなる。


6:吉田修一 『パレード』
春樹の流れを汲むとも言われる吉田修一の、サスペンスタッチも含む異色作。奇妙な同居生活も、著者が描くと都会のリアルな風景の一部と化すのが不思議なところ。著者のエッセンスは十分に、物語としてのピークも明確でエンターテインメントとして秀逸。


7:沙藤一樹 『プルトニウムと半月』
ブンガクテキホラー②。文章は稚拙だが、その重苦しく救いようのない展開が、深く読者の心に問いかける、極めて優れたエンターテインメント。埋もれてしまうのは勿体無い。


8:小林泰三 『ΑΩ』
一大エンターテインメント。リアルウルトラマンとでも言うべき。スケールの大きい展開と、作品世界への実に細微な面での拘り。笑いも涙もすべてこの作品のためにとっておけ。


9:京極夏彦 『姑獲鳥の夏
京極堂シリーズ第1作。薀蓄を推理と心理の解決に結実させる「憑き物落とし」は革命的だった。


10:乙一 『暗いところで待ち合わせ』
そこそこいい話を書かせたら乙一の右に出るものはいない。



【次点】

阿部和重 『無情の世界
殊能将之 『ハサミ男
舞城王太郎 『煙か土か食い物
島田荘司 『龍臥亭事件』
貫井徳郎 『神のふたつの貌』
森博嗣 『今はもうない』
古川日出男 『サウンドトラック』
東野圭吾 『白夜行
飛鳥部勝則 『砂漠の薔薇』
山田正紀 『神曲法廷』