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島田荘司 『本格ミステリー宣言』

本格ミステリー宣言
エッセイ、対談集。
綾辻行人歌野晶午法月綸太郎我孫子武丸らの新本格作家がデビューした頃の推薦文や対談・座談会を収録。新本格作家が所謂「人間が描けていない」問題で批判に晒されていた(らしい)当時を物語るような、御大の自己防衛心が垣間見える文章・語調がやや痛々しく、若干微笑ましい。本格ミステリーを論ずるにあたってまず「本格ミステリー」を定義する必要があるが、ここの出発点がやはり難しいもので、なかなか対談や座談会で有効な議論をするのは難しいだろう。
そうした「本格ミステリー」論よりも、『切り裂きジャック百年の孤独』『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』などの初期の名作に関するエッセイやインタビューの方が自分は興味深く読めた。巻末の警視庁組織図・任務・庁舎、死体現象の付録は面白い。手軽にインターネットで調べることのできない時代の、後進に対する餞なのだろう。