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小林泰三 『ティンカー・ベル殺し』

ティンカー・ベル殺し 〈メルヘン殺し〉シリーズ (創元クライム・クラブ)
海外文学をモチーフとし、井森=蜥蜴のビルが人間界と異世界をアーヴァータールを介して事件を追う「殺し」シリーズ。
今回ビルが潜り込む世界は「ピーター・パン」のネヴァーランド。「ピーター・パン」と言われてもまともに見たことも読んだこともなく、児童向け童話というイメージしかなかったが、実はピーター・パンは善悪の判断が困難で、癇癪持ちで、物事を忘れっぽい子どもであり、海賊や部族と殺し合いを演じるキャラクターだという。本作ではピーター・パンの子どもじみた発想からくる発言と、脳味噌の容量上複雑な記憶と判断が難しいビルのコンビが探偵役とワトソンとなり、滞ったじれったい会話を繰り返しながらティンカー・ベル殺害事件に迫る。
シリーズ既刊から引続き、本作も特殊設定下のミステリーという特徴を持つ。近年の小林泰三作品からすると、相当骨太?な部類と感じる。