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島田荘司 錦織淳 『死刑の遺伝子』

死刑の遺伝子
島田荘司と元弁護士で衆議院議員首相補佐官経験者である錦織淳の対談集。
死刑制度の廃止を主たるテーマとして、ロス疑惑・秋好事件・冤罪・日本人論・死刑のルーツ・量刑論・終身刑などの数々の議論が交わされる。
島田荘司が主張する死刑廃止について、法律のプロかつ政治家に色々ぶつけてみようという趣旨の対談。島荘の独特な日本人論から出発する様々な論述には、相変わらず妥当なものもあれば結論ありきの牽強付会なものも見られる。対談では相手がいることを意識してかまだ無難な言い回しをしているが、あとがきの文章の圧たるや、豪腕ここに極まれり、とでも言うべきもの。
話題のばらつき・まとまりの無さと言うか、何度も似たような議題が扱われ、同じような会話が交わされることにくどさを感じる部分がある。これは対談形式のため体系立てるのが難しいことも一つの理由だが(ただ体系立てて整理するのは編集や島荘の仕事ではある)、島荘が飛躍した発想・無理筋な仮定などをベースに議論をふっかけるのに対して、錦織氏が順序立てて整理しながらいなし続けた結果、堂々巡ってしまっている気もする。この辺り、流石法曹であり、流石政治家とも言える。
ところで本書の内容は、ミステリー論とは異なる意味でかなり専門的な内容を含む。脚注を付けたりは、できなかったのだろうか。