書は言を尽くさず、

本読んだりしています

西加奈子 『さくら』

よくある一家について流れた十数年の時に関して、短編集風にも思わせる形式でエピソード毎に章立てて綴られた一策。
表題となる「サクラ」はその一家の犬だが、常に話の中心に置かれるわけではない。一家にまつわる数々のエピソードを、事件に直面する家族たちを、サクラは傍よりそっと覗き眺める。そして、サクラへはあたたかな触れ合いが返される。視点人物が少年期から青年期ということもあり、文体から汲み取れる感性は繊細で、かつビビッドである。