書は言を尽くさず、

本読んだりしています

定金伸治 乙一 松原真琴 『とるこ日記』

作家3人によるトルコ旅行記。
典型的な文化系人間が慣れない海外旅行に行ったらどうなるか。容易に想像できる困難や怠惰が本書には詰まっている。

ベースとなる日記は定金伸治が執筆。その記述に対して他の二人がツッコミの記述を入れ、その記述に対して更にツッコミ……という構成。あたかも会話しているように途切れるまで続くため、明らかにツッコミの記述の方が多くなっている。特に乙一は定金の記述に補足するかのように自分なりの日記を挿入したりするので、ツッコミ記述のフォントサイズは小さく、本編は大きなフォントで読みやすくスペースも空き気味という破天荒なバランス。
日記の自由度の高さを活かした傑作。

付録として巻末には、旅行の中で書く流れになってしまった乙一の書き下ろし『毒殺天使』を収録。僅か6頁の分量ながら、切なさの達人の本領発揮である。