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早瀬乱 『三年坂 火の夢』

三年坂 火の夢
第52回江戸川乱歩賞受賞作。
著者は第11回日本ホラー小説大賞・佳作の『レテの支流』でデビュー済み。
前作『レテの支流』がホラーの形式に則り、特殊なSF的な設定と登場人物の心理描写に重きが置かれていたのに対して、本作ではミステリを意識して、事件の謎とその解明に焦点が置かれた書き方がされている。
ただ、その事件・謎が明治時代の東京に関連するため、若干その背景や東京の地理について説明が必要となる。その結果、ガイド的な描写が多めになってしまい、小説としてのテンポが崩されている部分が多い。
ホラー作家としてはともかくミステリ作家としては、もう1作ぐらい読んでみないと評価し難いかもしれない。