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小林泰三 『目を擦る女』

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)
文庫オリジナルの短編集。ホラー・SF・ミステリと何でもござれな小林泰三。本書収録の7編はミステリとホラーの要素を持っていたり、SF+ホラーだったりと、ジャンルを1つに確定しづらいものばかりである。
小林泰三はひたすら理屈で詰めに詰めることで作品世界を磐石なものにする。このスタイルは主にSF作品で活かされているが、ミステリ風の作品に説得力を付与することにも一役買っている。ネタとしては冷静に見るとそこまで凄いものではないか、もっと言うと不条理すぎたりするのだが、執拗なまでの理屈っぽさでどこか納得させられるわけである。この論理での強引なねじ伏せが小林泰三作品の最大の特長だと思う。


この短編集でいうと「予め決定されている明日」か。しかし「超限探偵Σ」はいまいちだった……。
特に「未公開実験」は、論理だけでなくユーモアの要素も合わさって何だかえらいことになっている傑作である。