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書は言を尽くさず、

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北方謙三 『悪党の裔』

悪党の裔〈上〉 (中公文庫) 悪党の裔〈下〉 (中公文庫)
北方南北朝シリーズ第4作。
播磨の悪党・赤松円心を主人公とする。現在の一般的な「悪」という字面から連想するイメージとは異なる、既存の体制に対抗するもの・力強いものという意味の「悪党」。その悪党の視点から、鎌倉幕府の倒幕から南北朝騒乱の初期までが描かれる。
なお、この時代は『破軍の星』『楠木正成』等でほぼ同じ時系列を同じ著者のもと何度も描かれているが、視点となる中心人物は異なり、かつお得意の多くは語らない文章によって深みのある人物描写がなされているため、飽きはあまり来ない。
主人公・赤松円心は作中で齢50。情熱を前面に出す年齢ではないため、立ち回りの周到さ・老獪さや死生観・世に対する諦念のようなものが強調されることが多い。一方で、則祐をはじめとした円心の息子達や大塔宮護良親王、赤松氏支族の小寺頼季らが若気による強い熱を放ち、物語を彩る形となっている。
特に、副主人公の位置付けに近い大塔宮護良親王と、側近として彼を見守る小寺頼季。二人の生き様は刮目に値する。
また、『楠木正成』では描かれなかった楠木正成の最期は、本作で描かれていることもポイント。