『犯罪小説集』に続くコンセプト短編集。
実際にあった事件をモチーフとしていると思われる。連想できる事件もちらほらある。
4つの逃亡が描かれる。その逃亡に至るまでの経緯は様々であるが、逃亡することの合理性はいずれも薄い。要は損得勘定などを外れた衝動的なものなのだが、その上で出色なのは「逃げろ九州男児」。
逃亡行為に至った遠因は複数描きつつも、決定的な事象がなんだったのか、分かりやすい描写はないように思える。それが却ってリアリティを感じさせて面白い。吉田修一の理外の魅力が遺憾なく発揮されている。