書は言を尽くさず、

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相沢沙呼 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)
冒頭にモノローグを配置し、その後4編のエピソードが描かれる連作短編形式の作品。
推理作家の香月は大学の後輩・結花から付き添いを依頼される。占い師より、結花の背後に女性が泣いていると告げられ、紹介された霊媒師・城塚翡翠のもとへ訪問するという。同行した香月は翡翠の超常的な力を垣間見る。
著者の作品を読むのは初めて。文章表現は繊細さを感じさせる丁寧なタッチ。青春小説も得意とするらしいと聞きなるほどなとなる。推理面はロジックを意識した緻密さがあり、流石鮎川哲也賞作家というところか。
本書を語るにあたってなかなかにネタバレを含まないのは難しいが、「この真相であって欲しくないな」という予想しやすい所に敢えて落とし込みながら、結末を予想していた読者も唸らせるような工夫が見られ、その力量とミステリへの心血の注ぎ方に感服する。