森見登美彦の小説『美女と竹林』を題材としたアンソロジー。参加作家は阿川せんり、飴村行、有栖川有栖、伊坂幸太郎、恩田陸、北野勇作、京極夏彦、佐藤哲也、森見登美彦、矢部嵩。
よりによって森見登美彦作品で1,2を争う異色作『美女と竹林』でアンソロジーを編むとは。参加作家は森見本人からの要望とのこと。
絞ったテーマのため多少パーツが似通うのは仕方ないが、扱い方は様々。各々の文体や作風が色濃く見える結果となっている印象。
以下作品ごとの感想。掲載順。
・阿川せんり:初めて読む作家。ライトな文体。通常運転なのか、そうでないのか分からない。
・伊坂幸太郎:伊坂ワールドにいそうな登場人物たちと、ファンタジーと希望。
・北野勇作:初めて読む作家。幻想に振った作風。擬音など独特な部分が雰囲気を形作る。
・恩田陸:一番オーソドックスな怪談ながら、急にどうした!という要素も。
・飴村行:どちらかと言うと漫談に近い。
・森見登美彦:怪談というか、ファンタジーというか、このジャンルでの安定感を見せるところは流石。
・有栖川有栖:ほぼワンワードのアイデアを膨らませたものと思うが。昔からの印象だが著者の文体と関西弁の相性は飛び抜けて良いわけではないと思う。
・京極夏彦:流石の京極文体。雰囲気作りの美味さが飛び抜けている。
・佐藤哲也:曲者。割とシンプルな話が何故こうなるのか。
・矢部嵩:トリに相応しい混沌と起伏を備えた怪作。もっと長く読みたい。