日本近代文学の名作を、森見登美彦が京都を舞台にリミックス。対象作品は、中島敦「山月記」、芥川龍之介「藪の中」、太宰治「走れメロス」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、森鴎外「百物語」。
あまり見られない文学作品のリメイク。本作は、原作の情況と大まかな筋を下敷きにしただけで、時代設定を現代に、舞台を京都に移し替え、対象作品5編を同一世界設定に置き換えて、登場人物のクロスオーバーも施した、どこから見ても森見作品に仕上げている。
原作冒涜ではない。ここまでやれば最早オリジナル作品に近いが、下手にあとがきやインタビューでオマージュと語るよりも、堂々と敬意を払っているようで潔い。
加えて純粋に愉しい物語である。特に表題作、「走れメロス」はただただ痛快。