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貫井徳郎 『罪と祈り』

罪と祈り
webジェイ・ノベル連載作品の単行本化。
定年退職した警察官が殺害された。その息子の亮輔と、義兄弟のように育てられた現役刑事の賢剛は、それぞれの形で事件の謎を追う。
現在の事件と、亮輔と賢剛が幼い頃に起きた父親世代の事件の2つの時系列が交互に描かれる。現在の事件にかかるフーダニットの側面に加え、過去の事件とのミッシングリンクを探るミステリでもある。貫井徳郎らしい落ち着いて抑えの利いた文章は流石というものでリーダビリティが高いが、少し困るのは登場人物ごとの特色が出づらいことか。今回においては、視点人物となる亮輔、賢剛、辰司、智士の4名ともが落ち着いた雰囲気と自重性を持つキャラクターであったために、どうも一本調子に感じられてしまった。
試みは理解でき、また「集大成」と煽りたくなる要素と感じるが、貫井的にオーソドックスな落とし方に止まったとも言える。