2編収録の短編集。
「執筆時点での」著者にとって興味津々な話題、旧ユーゴスラヴィア内戦関連の作品集である。
表題作には、ボスニア紛争・MMORPG・21世紀本格というまったく話題のジャンルもベクトルも異なる要素がごった煮同然に詰め込まれている。著者の脇道に対する力の入れ様は相変わらずなもので、異様な迫力と題材の濃さに圧倒されてしまう。
メインのトリックはまさに奇想に溢れるものであるが、サブの21世紀本格的な論理的帰結は、個人的には好かない傾向である。科学的に有り得ることだとしても、イメージが着かない事象に対しては、カタルシスは生まれない。読み物としてはともかく、小説としてはいかがなものか。