メフィスト賞でデビューした著者の、渾身の青春小説。
転勤族の親を持つ少年と、チャラい東京からの転校生と、忌避される美少女の物語。
その語り口には、背伸びした冷淡さと捻くれた優しさ、そして強い自己弁護と自己嫌悪が溢れている。思春期のアンビバレンツと言ってしまえば簡単だが、それをここまで細やかな会話文と地の文で表現できるのが素晴らしい。
巻末の解説で「ヤングアダルト作家」という表現が使われているが、こんなにも「ヤングアダルト」という言葉がしっくり来る人も珍しい。本当にいま青春の真っ只中にいる人(ヤングとアダルトの中間)よりも、青春を過去として振り返る人(ヤングを通過済のアダルト)の方が愉しめるのではないかと思う。