書は言を尽くさず、

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麻耶雄嵩 『夏と冬の奏鳴曲』

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

いったい何なのだ……

序盤は二つの主題が提示される。中盤はそれら主題がゆったりとした調子で展開され、終盤には二つの主題の再現が行われる。解るような解らないようなソナタ形式
始まりは荘厳。二つの主題は「和音」と「烏有」となる。中盤は徐々に「展開」が行われていき、終盤からはただひたすら呆気に取られたまま閉幕に至る。
ただ終盤、箇条書きだけで済ませている章もあり、飽きたのか手を抜いたのかと思わせる節がある。が、結果としてそれは張り詰めたような感覚を持続させる効果をあげていたりする。
とりあえず今回再読して確認できたのは、この小説は完璧な作品とはなっていないながらも、読者を引き寄せ揺さぶり翻弄する、何とも残酷で極端で少々可笑しな傑作ということと、自分は麻耶作品の中でこの小説が一番好きだということ。