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大山尚利 『揺りかごの上で』

揺りかごの上で
日本ホラー小説大賞長編賞の受賞第一作となる。
のち、おやすみ、ロビン (角川ホラー文庫)に改題。
前作『チューイングボーン』と同様、俗に言うモダンホラーに属する作品で、特筆すべきは心理描写と物語の展開である。
視点は主人公のみで少年時代が全体の大半を占めるが、不安・歓喜・焦燥・憤怒・後悔などの感情が繊細に描写されており、これでもかというように感情移入を誘う。
展開については、常に嫌な予感を孕みながら、その予感が何らかの形であたっていくように進む。中盤からのアクロバットは驚愕で、読了後に改めて冒頭を読み返した際に訪れる感情は、容易には形状しがたい。
久しぶりに純粋に物語を堪能できた一作だった。