書は言を尽くさず、

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貫井徳郎 『壁の男』

壁の男
町の家々の壁に稚拙だが魅力的な絵を描く男。男が壁に「絵を描く」という事実(謎)が先に示され、「なぜ」を求めて男の出自・家族等々の背景が次々描かれていく。ひとりの人生を綴っていく筆運びはまさに「絵を描く」という行為との同義性を感じる。が、結末を迎える段階で「なぜ描くのか」という点を読者に納得させられそうかというと、どうも疑問符は残る。エピソード間の整合性面で気になる点が多いためだろう。雑誌連載ものの宿命か。加筆修正があるのかないのか判らないが。残念。