和泉蝋庵シリーズ短編集。『エムブリヲ奇譚』続編。
「旅本」作家の和泉蝋庵と荷物持ちの耳彦と出資者からの監視役の輪、3人の旅道中が描かれる。
悲哀あり、人外あり、不可思議あり、グロテスクあり。方針は前作と変わらない。輪がレギュラー化し、耳彦との口喧嘩が一つのフォーマットになっている点が変わった所か。
相も変わらず散々な目に遭い続ける耳彦。場面場面では繊細な心持ちを見せ、一生立ち直れないのではと思わせるような傷を負うものの、次の話では全くもって懲りずに蝋庵と旅に出る。続きモノのお約束なので仕方ないが、なんとまぁ憐れである。
書き下ろし作品は、この連作のある意味での「まとめ」。今後も続くことを約束しながら、一旦の完結を促すような、最終回的な位置付け。本当の最終回とはならず、更なる続編となることを、著者本人の刊行ペースや他名義との兼ね合いも考慮し、気長に待ち望む。