書は言を尽くさず、

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島田荘司 『御手洗潔の追憶』

御手洗潔の追憶(新潮文庫)
ファンブック等での御手洗潔関連の短編を集めたもの。
収録作のうち、「天使の名前」は御手洗潔父親にかかる戦時中のエピソード。名文続きで、確かな筆力・文章の圧と熱量を感じさせる。本書のベスト。
しかし。その後は犬坊里美文体に脱力、レオナの自己愛を押し付けられ、石岡先生の好きなコンビニ弁当を教えられたり、過去の著作の無粋なほじくり返しやネタバレを受けたり。余韻を挟む猶予なしというのは、如何なものか…。必要以上に沈み込まなくならないようにと、読者への配慮だろうか、なぁ。
また、「あとがきに代えて」で島田御大より語られる天才像はまさに我らが魅了された御手洗潔そのもの。しかし、近作はそれから離れた表現が多いように思うが、これはどうしたことだろうか…。
それでも、「天使の名前」だけのためでも読む価値があると思う。他の作品も、求める層がいる事も理解はする。